生物が多細胞化を達成するには、細胞の連携や接続強度などクリアしなければならない課題が数多く存在します。
しかし多細胞化に成功すれば、消化・生殖・運動・感覚など特定の機能に特化した細胞たちによる分業が可能になる大きな利点を得られます。
(※同様の独立した複数回の進化は「カニ化」でも起きています)
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そのためたとえば、動物・植物・菌類(キノコなど)が多細胞化した過程を調べると、3者は共通の多細胞祖先が3つに分派したのではなく、それぞれ
「後に動物になる多細胞の祖先」
「後に植物になる多細胞の祖先」
「後に菌類(キノコなど)になる多細胞の祖先」
と3回の独立した(無関係な)祖先に由来することがわかっています。
動物の「目」や哺乳類の「胎盤」は共通先祖に起きた1度限りの変異を起源としていることを考えると、多細胞化を促す進化圧力(需要)は相当に高かったことが伺えます。
しかし単細胞生物がどのようにして多細胞化したかは、多くが謎につつまれていました。
そこで近年、実験室の環境で単細胞生物を多細胞生物に進化させる「人工進化実験」が盛んに行われるようになってきました。
たとえば2012年に行われた研究では、単細胞生物である酵母たちの生活環境をあえて多細胞生物「向け」の過酷な環境に変化させ、多細胞化に向けた進化圧力が高められました。

すると60日ほどで、いくつかの酵母たちは、上の図のように、細胞分裂しても互いにくっついた雪の結晶(スノーフレーク)のような状態を維持するようになり、多細胞化に向けて歩み始めることが示されました。