アメリカ・フロリダ州で、いわゆる「ケムトレイル」を禁止する法案が州上院で可決され、成立に向けて前進している。ケムトレイルとは、一部で囁かれる陰謀論で、航空機が飛行機雲(コントレイル)に紛れて化学物質や生物剤を意図的に散布し、天候や、果ては人々の精神まで操作しているとする説のことだ。

 この法案が成立すれば、フロリダ州はテネシー州に次いで、このような活動を公式に禁止する全米で2番目の州となる。ロン・デサンティス知事もこの法案を支持しているが、知事自身はマインドコントロールのような陰謀論を信じているわけではない、と念を押している。

 法案では、「気温、天候、気候、または太陽光の強度に影響を与える明確な目的で、フロリダ州の境界内の大気中に、いかなる手段によっても化学物質、化合物、物質、または装置を注入、放出、または分散させること」を禁じている。違反した場合、最大で懲役5年および10万ドルの罰金が科される可能性がある。

 デサンティス知事は、「気候変動から我々を救うために、太陽を遮るようなものを大気中に放出できる、といった奇妙なアイデアを持つ人々がいる。我々はフロリダでそのようなゲームに乗るつもりはない」と、法案支持の理由を説明している。

狙いは「太陽光遮断」? ジオエンジニアリングへの警鐘

 この法案が主に警戒しているのは、近年、気候変動対策として議論されることがある「ジオエンジニアリング(地球工学)」、特に太陽光を意図的に遮断しようとする試みのようだ。

 環境保護論者の中には、地球温暖化を食い止めるために太陽光を弱める技術的解決策を提案する声も存在する。例えば、米環境保護庁(EPA)は、成層圏に二酸化硫黄を注入して「地球の日焼け止め」効果を狙う企業の調査を進めている。また、英国政府も最近、地球を人工的に冷却することで気候変動の脅威を減らすための屋外実験を開始すると発表した。この実験では、雲に粒子を注入し、太陽の熱や放射線を地表から反射させることが計画されているという。

 こうした動きに対し、今回のフロリダ州の法案提出者の一人であるイリアナ・ガルシア州上院議員(共和党)は、SNSで「フロリダではやらせない!」と短いコメントを発信し、断固たる姿勢を示している。法案が成立すれば、州内でジオエンジニアリング活動を目撃したと考える人のための政府直通のEメールホットラインが設置され、州内の公設空港には、気候変動を目的として大気汚染物質を放出できる装置を備えた航空機の報告が義務付けられることになる。