もし、脂肪前駆細胞の異常な活性化を抑制できれば、こうした疾患を根本から予防する道が開かれる可能性があります。

実際、City of Hopeの研究チームも、この細胞の挙動を制御する薬剤や治療戦略の開発に向けて、今後さらに研究を進めていく予定だと述べています。

いずれ、年齢による自然な脂肪増加を穏やかに抑え、健康寿命を延ばす新たな選択肢が生まれるかもしれません。

とはいえ、現時点ではこの研究は基礎段階にあり、すぐに実用化されるわけではありません。

また、たとえ体内の細胞変化が避けがたいものであっても、日常生活の中での食事管理や適度な運動習慣が脂肪蓄積を遅らせ、全体の健康リスクを下げることに変わりはない、と研究者たちは強調しています。

メタボはいつまでも若い頃と変わらない食事や、運動をサボっているからという怠惰だけが理由でなかったようです。

ちょっと気を使っているという程度では避けられない、想像以上に根の深い健康の問題だったのです。

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参考文献

New Research Explains why our Waistlines Expand in Middle Age
https://www.cityofhope.org/new-research-explains-why-our-waistlines-expand-in-middle-age

元論文

Distinct adipose progenitor cells emerging with age drive active adipogenesis
https://doi.org/10.1126/science.adj0430

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部