ちなみに、ツァイリンガー氏は2016年、「量子物理学が神と直面する時点に到着することはあり得ない。神は実証するという意味で自然科学的に発見されることはない。もし自然科学的な方法で神が発見されたとすれば、宗教と信仰の終わりを意味する」とメディアに答えている。

ジジェク氏は「神は虚構だ。しかし、それは私たちの現実を構成する虚構だ。神を消し去れば、残るのは私たちの現実ではない。恐ろしい深淵だ」と述べている。

ジジェク氏の呟きは、仏人気作家ミシェル・ウエルベック(Michel Houellebecq)氏がドイツ週刊紙「ツァイト」とのインタビューの中で、「宗教なき社会は生存力がない。自分は墓地に足を運ぶ度、われわれ社会の無神論主義にやりきれない思いが湧き、耐えられなくなる」と述べたことを思い出させた。ジジェク氏は、神を否定してはいるが、その不在に恐れを感じている知識人の一人ではないか。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。