誤解のないように伝えておきますが、知識を身につけることはとてもよいことです。士業として開業した以上、知識を蓄えることへの投資は怠るべきではありません。ただし、優先順位を考えれば、「勉強」と「営業」のどちらにフォーカスするべきか、自ずと見えてくるはずです。

多くの場合、社労士の開業は顧問ゼロから始まります。人によって幸運にもいわゆる「のれん分け」のように顧問先を勤務先の事務所から分けてもらえるケースがありますが、最近ではごく少数のようです。ですから、誰もが早く仕事を取らなければならない状況にいます。開業資金が潤沢にある状況を除けば、勉強をしている場合ではないのです。資格を取ったことで、最低限の知識はあるわけですから、早く営業に取りかかる必要があります。

では、相談に回答できなくてもよいのか? と思われるかもしれません。もちろん、回答をしなければ仕事は取れないのはいうまでもないことです。ただし、「即答」しなくてもよいのです。商談でも同じですが、「その件に関しましては、調査の上すぐに回答いたします」として宿題にしてしまえばよいのです。

そもそもあらゆる分野について、完璧に答えられる士業はいないといっても過言ではないでしょう。そのくらい法律は難しく深いものです。ですから、知識を増やすことも大事ですが、それ以上に営業をして仕事を取ってくることが創業期の至上命題であるといえるでしょう。

常に必要な知識は「浅く広い知識」徐々に「深く広く」していこう

私自身が実際にこのやり方で仕事を取ってきました。23歳、実務経験のないところから開業しましたが、その当時お金はほとんどありませんでした。そのような状況で勉強に専念していたら干上がってしまいます。

そこで、まずは広く浅く専門家としてプロになるのではなく、「プロ感」を出すように振る舞いました。つまり、広く浅くさまざまなことを知っているというところまで、短期間で知識を作り上げたのです。覚えるべきものは、私のように行政書士であれば許認可要件と主要な数字です。