そこで研究チームは今回、動物園で飼育されている霊長類以外の250種以上にスポットを当て、来園者の存在がそれぞれの種にどう影響するかを調べました。
具体的には、飼育動物への来園者の作用について調べた105件の先行研究のメタ分析という方法を採っています。
調査された動物の大半は哺乳類(56%)と鳥類(28%)で、残りは両生類、爬虫類、魚類、無脊椎動物です。
来園者の影響の測定には、動物の活動レベル・飼育スペースの使い方・食事量・活動量・休息時間・異常行動・警戒心・社会的行動などを指標としました。
その結果、来園者の存在によって最もポジティブな影響を受けていたのが「ゾウ」でした。
ゾウは来園者の数が多いときほど、ひとりぼっちで過ごす時間が減り、仲間とのコミュニケーションなどの社会的行動が増加していたのです。

さらに来園者の前で行われる公開の食事量も増え、より活動的になっていました。
加えて、同じ場所を何度も歩き回るなどの「繰り返し行動」の数が減っています。
繰り返し行動とは動物が退屈していることを示す行動とされます。
そのため、ゾウは人が来てくれることで元気になり、心身の健康にプラスの影響を受けていると考えられるのです。
ゾウ以外の動物の反応はどうなった?
ゾウ以外にも来園者の存在がプラスに働いている動物たちがいました。
例えばオウムは、来園者が多い日ほどケージの近くに寄ってきて、人前で過ごす時間が増え、仲間との社会的行動も増加させています。
それから肯定的な影響は、ペンギンやジャガー、グリズリー、ホッキョクグマ、チーター、ウシ科のバンテン、リス科のプレーリードッグなどに少なからず見られました。

反対に、来園者の存在が悪影響になっていたのは、主にダチョウやカンガルー、ハリネズミ、キリン、サイなどでした。