動物園のゾウは私たちの来園を心待ちにしているようです。

英ノッティンガム・トレント大学(NTU)、ハーパーアダムス大学(HAU)の研究チームは、コロナのロックダウン中に動物園の霊長類が人が来ないことで元気を失くし、食事量が減って孤独な時間が増えていることを発見していました。

そこで研究チームはコロナ収束後、霊長類以外の動物250種以上を対象に、来園者の存在が彼らにどんな影響を与えるかを調査。

その結果、ゾウは来園者が来ることで食事量や仲間とのコミュニケーションが増え、さらに退屈さの証拠である「繰り返し行動」が減少することが分かったのです。

人がいない静かな動物園より、大勢の人で賑わっている動物園の方がゾウもテンションが上がるのかもしれません。

研究の詳細は、2023年3月28日付で科学雑誌『Animals』に掲載されています。

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  • ゾウは来園者の存在で元気になっていた

ゾウは来園者の存在で元気になっていた

飼育動物への来園者の影響については、ここ10年間で着実に研究が進んでいます。

特にコロナ禍に報告された幾つかの調査が大きな注目を集めました。

例えば、2020年に豪クイーンズランド州にあるケアンズ水族館では、ロックダウン中に人が来なくなったことで館内の魚たちが次々と「うつ症状」を起こし始めたのです。

人に会えなくなった水族館の魚たちに次々と「うつ症状」が出始める

また本研究チームによる昨年の調査では、ロックダウン中のイギリスの動物園で、ボノボやチンパンジー、ゴリラを含む霊長類が、来園者がいなくなったことで1日の活動量や食事量が減り、ひとりぼっちで過ごす時間が増えたことが分かっています。

ロックダウンで来園者がいなくなった動物園では動物も元気をなくしていた

このように来園者は動物たちにとって重要であり、あらゆる種に多様な影響を与えていると考えられるのです。

研究主任でNTUの動物福祉学者であるサマンサ・ウォード(Samantha Ward)氏は「来園者の存在は、動物にとってコントロールできない環境要因であり、それにうまく適応できる種もいれば、逆にストレスになる種もいると予想される」と話します。