・気候変動対策としての位置づけ::

化石燃料(石炭や石油など)に比べて即時的なCO2削減が可能な代替エネルギーとして、特に発電や暖房用途でバイオマスが推進され、欧米では再生可能エネルギー政策に組み込まれてきました。

この理論は、2000年代初頭からEUの再生可能エネルギー指令(Renewable Energy Directive, RED)などで採用され、バイオマスが「グリーンエネルギー」の重要な柱と位置づけられました。しかし、この理論には前提条件(持続可能な森林管理や植林の実施)が不可欠であり、それが現実的に守られない場合に問題が生じることが後に指摘されるようになりました。

2. 欧州で木材バイオマスがグリーンエネルギーから除外された理由

近年、欧州で木材バイオマスがグリーンエネルギーとしての分類から除外される動きが進んだ背景には、科学的・環境的懸念と政策の見直しがあります。

主な理由は以下の通りです:

・炭素中立性の現実的な限界:

理論上は炭素中立でも、実際には木材燃焼によるCO2排出が即時に発生する一方、植林による炭素吸収には数十年から百年単位の時間が必要であることが問題視されました。このタイムラグにより、短期的な気候変動対策(特に2030年や2050年の目標)には逆効果となる可能性が指摘されています。

・森林破壊と生態系への影響::

バイオマス需要の増加により、持続可能な管理を超えた過剰な伐採が進み、原生林や生物多様性の豊かな森林が失われるケースが報告されました。例えば、東欧や北米からEUに輸入される木材チップが、保護林の伐採に繋がっていることが明らかになり、環境団体や科学者から批判が強まりました。

・科学的再評価:

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や欧州の研究者たちが、バイオマスの炭素中立性を再評価し、「燃焼時の排出が即座にオフセットされない」点を強調。2018年には784人の科学者がEU議会に書簡を送り、バイオマスを再生可能エネルギーに含める政策を見直すよう訴えました。