研究チームは、北アメリカのカンパニアン期(約8360万〜7210万年前)およびマーストリヒチアン期(約7210万〜6600万年前)に属する約8000点の恐竜化石記録を詳細に分析しました。
対象としたのは、アンキロサウルス科、ケラトプス科、ハドロサウルス科、ティラノサウルス科の4つの主要なグループです。
表面的に見れば、恐竜の多様性は約7600万年前にピークを迎え、その後徐々に減少し、小惑星衝突の直前では顕著に減っていたように見えました。
しかしチームによると、「このような減少傾向を裏付ける環境要因や生態学的変化は確認されておらず、衰退の証拠とは言い難い」といいます。
むしろ新たな化石記録の分析では、恐竜たちは衝突直前まで北アメリカ全体に広く分布し、種としての安定性を保っていたことが示唆されたのです。
では、なぜ化石数だけが減っているように見えるのでしょうか?
その背景には、化石が保存されにくい地質条件の変化がありました。
マーストリヒチアン期には、かつて北アメリカ大陸を南北に分断していた「西部内陸海(Western Interior Seaway)」が後退し、ロッキー山脈の隆起が始まりました。
これにより、堆積環境が変化し、それ以前に比べて化石が形成されにくくなったのです。
また現在の地表では、当時の白亜紀末の地層が植物に覆われていたり、風化や侵食で失われたりしており、発掘が困難な状況にあることも判明しました。
こうした地質的・環境的要因によって、恐竜の化石が見つかりにくくなり、「多様性が低下した」という見かけの現象を生んでいたのです。

分析によれば、8000件の記録の中で最も多く見つかっていたのはケラトプス類(トリケラトプスなど)でした。