約6600万年前の白亜紀末、今日のメキシコあたりに巨大な隕石が衝突し、恐竜時代に終わりを告げました。

これは古生物学界でも常識となっていますが、その一方で、ある疑問が研究者たちによって長らく議論され続けています。

それは「隕石の衝突前から、恐竜たちはすでに衰退の一途を辿っていたのではないか」という問題です。

これについて、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)は新たに調査を実施。

その結果、白亜紀末の恐竜たちは衝突の直前も十分に繁栄していたことが示されたのです。

つまり、隕石が地球を外れていたら、恐竜は今も生き延びていたのかもしれません。

研究の詳細は2025年4月8日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されました。

 

目次

  • 隕石衝突前から恐竜は絶滅に向かっていたのか?
  • 恐竜は衰退していなかった?

隕石衝突前から恐竜は絶滅に向かっていたのか?

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Credit: canva

研究者の一部はこれまで、白亜紀末の恐竜化石が他の時代に比べて減っていることから「恐竜は隕石の衝突以前からすでに多様性を失い、衰退していた可能性が高い」と主張していました。

たしかに化石記録を素直に見渡せば、約7600万年前をピークに恐竜化石の種類は減少していったように見えます。

しかし、これには重大な盲点がありました。

それは「見つかっている化石が少ない=実際に生きていた恐竜が少ない」とは限らない、ということです。

恐竜の化石は、その時代の地質や保存状態、現在の地表の露出状況に強く左右されます。

そこで今回の研究チームはこの「化石記録の質」そのものを問い直すことにしました。

彼らが注目したのは、アンキロサウルス科、ハドロサウルス科、ケラトプス科、ティラノサウルス科という4つの主要な恐竜グループです。

これらの恐竜について、白亜紀末の北アメリカ大陸の約1800万年間にわたる化石記録を詳細に調査しました。

恐竜は衰退していなかった?