一方、大阪地検元検事正の性加害の問題では、「二次被害」の問題の核心とも言える女性副検事による情報拡散について、A氏が会見まで開いて「検察の二次加害」を訴えているのに、検察は、女性副検事の告訴・告発事件の不起訴処分の際に「司法クラブ記者だけを対象とする、カメラも入れない閉鎖的な説明の場」で一方的な不起訴理由の説明を行っただけで、A氏から指摘されている「二次加害」の問題について、全く説明を行っていない。
NHKは、4月11日に【上司からの性被害 女性検事が語った沈黙の6年間と二次被害】と題して、A氏のインタビューを中心とするニュースを放映し、ネット記事もアップされている。
ここでは、A氏が受けた性犯罪による被害の深刻さや、女性副検事による情報漏洩について伝え、北川氏が逮捕されたあとA氏が復職する際に、検察が女性副検事とA氏と同じ職場に配置していたことについて、検察の現役職員がこの対応を疑問視している声を取り上げている。
さらに、「A氏をおとしめる内容の情報が、検察内部で出回っていたこともわかった」とし、3月まで大阪高検検事だった田中嘉寿子氏が、2024年7月に「事件が起きたのは、被害者が北川被告に好意を持っていたからだ」という内容のメールを東京の検事から受け取ったことを明かし、「彼女が検事なので二次被害から守るべき対象だという認識が欠如していたのではないかと思います。被害者としてきちんと扱うところから始めないと、自分たちの組織が、現在進行形で二次加害をしているという自覚が生まれないと思います」とのコメントも紹介している。
さらに、4月15日の関西ローカルのNHK記事では「検察組織に自浄作用はないので、第三者委員会を設置し、徹底した検証と再発防止を求める必要があります」とのA氏の言葉を紹介している。
A氏は、「検察組織がこれほど不正義で闇深く、犯罪被害を受けた検察職員にすら寄り添わないことを、自分が被害者になって初めて気づきました」として、検察の組織による性被害に対する「二次加害」を問題にしている。しかし、A氏の訴えを積極的に報じているNHKですら、現状では「二次加害」という言葉は、前記の田中氏のコメントを引用しているだけで、記事のタイトルは「二次被害」であり、他に、検察組織の「二次加害」を正面から問題にしたメディアはない。