しかし、A氏が名誉毀損などの疑いで女性副検事を告訴・告発した事件については、検察は、「北川被告を案じる心情などから個別に情報を伝えたにとどまり、副検事を起点として情報が拡散した事実も認められない」と判断して「不起訴処分」とし、それとほぼ同時期に、女性副検事に対する告訴・告発事件を担当した大阪高検の部長が、A氏に対して、「不起訴は何か都合の悪いことを隠すためではない」などとした上で、「外部発信をするようなことがあれば、検察職員でありながら、警告を受けたにもかかわらず信用を貶(おとし)める行為を繰り返しているとの評価をせざるを得ない」「これは口止めや脅しではなく、当たり前のこと」とするメールを送っていたことも明らかになった。
A氏は、その後開いた会見で、「このメールに絶望し、恐怖し、ひどくおびえた」「『職務』として被害者をやっているのではありません」と涙ながらに語り、このメールは検察による性犯罪や二次加害の軽視、被害者軽視の象徴だと批判し、「なぜ検察でこのような犯罪が起きたのか、第三者委員会による検証を行い、再発防止に努めるべき」と訴え、「検察は、事件を『個人の被害』という問題に矮小化しようとしている」と批判した。
フジテレビの「性加害問題」では、週刊文春の報道を契機に同社への批判が炎上し、第三者委員会が、同社による「二次加害」を厳しく非難した。一方、「大阪地検元検事正による性加害」では、被害者のA氏自身が、検察組織による「二次加害」を問題にしている。
被害者のA氏の訴えによれば、検察組織による「二次加害」は、フジテレビ問題より一層深刻かつ重大であるように思える。
ところが、この問題では、マスコミからは、検察組織の責任を問う声、説明責任を果たすよう求める声は、ほとんど聞かれない。
フジテレビの問題では、週刊文春の報道後、通常の社長定例会見と同様に、「会見参加者はクラブ加盟記者のみ、質問者も限定、テレビカメラなし」での会見を開いたことに対して厳しい社会的批判を浴びた。