このように、「気候変動」という言葉は、単なる科学用語ではなく、政治・経済・世論対策のツールとしても機能しているのです。

科学的な意味との乖離も

本来、「気候変動」は科学的には数十年から百年単位で観測される気候の平均的変化を指します。短期的な寒波や猛暑は、統計的に「天気(weather)」の変動と見なされ、気候(climate)とは区別されるのが基本です。

しかし現在では、気象と気候の区別が曖昧になり、あらゆる天候異変が“気候変動”として説明されるようになっているのが実態です。

【まとめ】言葉が現実を包み込む構造

以下の表に、用語の使い分けの実態をまとめてみます。

現象 昔の言い方 今の言い方 利点(使う側にとって)

猛暑・干ばつ 温暖化の影響 気候変動の影響 一貫した危機感を演出可能

寒波・大雪 温暖化に反する? 気候変動の影響 矛盾を回避できる

平年並みの気候 ― 特に言及せず “正常”が説明不要になる

大雨・台風 異常気象 気候変動の影響 政策に活用しやすい

つまり、「気候変動」という言葉は、都合の悪い事実を曖昧にし、都合のいいストーリーだけを残せる言葉になっているのです。

おわりに

言葉は現実を映す鏡であると同時に、時に現実を作り出します。「気候変動」という言葉がここまで広く使われている背景には、科学的な説明だけでなく、政治的・社会的な意図が少なからず含まれています。

大切なのは、その言葉が使われている「文脈」と「目的」を見抜くことです。ただの自然現象か、それとも意図されたメッセージか。耳にする言葉の裏側に、少しだけ疑問の目を向けてみることです。それが、私たちがこの情報社会で惑わされずに生きる第一歩かもしれません。