古代の朝鮮半島には、国内で起こるあらゆる出来事を記録する、特別な役割を担う「史官」が存在した。自然現象、疫病、戦争、天変地異、反乱、発見… まさに森羅万象を記録する訓練を受けた彼らのおかげで、歴史の闇に消えていたかもしれない多くの出来事が、今日まで伝えられている。

 そして、彼らが残した記録の中には、現代の我々から見ると極めて不可解で驚くべき現象に関する記述も含まれているのだ。その中でも特に有名なのが、1609年9月22日に発生したとされる、異常な空中現象に関する記録である。これは朝鮮王朝時代の韓国上空にUFOが出現したことを示すものなのだろうか?

空から響く鐘の音と赤い布?(江原道)

 その日、江原道(カンウォンド)では、数百人の農民や商人たちが、空から響く大きな鐘の音を聞いた。空は雲一つなく晴れ渡っていたという。その音は雷鳴に似ていたが、どこか異なっていた。

 断続的に続くその奇妙な音のせいで人々はすぐに頭痛や聴覚異常を訴え始めた。音が弱まると、今度は太鼓のような音が空から鳴り響き始めた。住民たちの体調不良を受け、当時の王である光海君は、彼らに畑仕事へ出なくても良いと許可したほどだった。

 しかし、異変は音だけではなかった。空の真ん中に、突如として巨大な赤い「カンバス(帆布)」のようなものが現れたのだ。それは空を飛びながら太陽の円盤を覆い隠した。巨大な布切れかと思われたその物体は、しかし、形を変え始めた。リンゴ、あるいはカボチャのような形になったという。

 ある瞬間、その物体からあらゆる方向へ光が流れ出し始めた。明るい赤い斑点が数分間空に浮かんだ後、再び鐘の音のような、しかし今度は10倍も強力な音が鳴り響き、天と地を揺るがした。その後、すべては静寂に包まれたという。