この問いに答えるため、イタリア技術研究所(IIT)の研究チームは、イタリアの森で木々の電気的な活動を記録することにしました。

「木が電気を出している?」と不思議に思うかもしれません。

実は、植物の体の中では、電気のような信号が流れていることが昔から知られています。

これは「bioelectrical signals(生体電気信号)」と呼ばれ、外の環境に変化があると、その刺激を受けて電気的に反応します。

人間でいえば、脳や神経が情報をやりとりするように、植物も体の中で情報を伝え合っているのです。

今回の研究では、特別なセンサー装置を使い、木に針のような電極をつけて、電気信号の強さやパターンの変化を記録しました。

観測されたのは、オウシュウトウヒ(またはヨーロッパトウヒ、学名: Picea abies)であり、70歳の木、20歳の若い木、古い切り株などが観察対象となりました。

では、日食の間、これら木の中で電気信号はどのように変化したのでしょうか。

日食の時、トウヒの木はコミュニケーションを取っているかもしれない

実験の結果、生体電気信号を観察したすべての木が、日食が始まる数時間前から電気信号のパターンを変えていると分かりました。

その変化は、日食中に最大になり、終わると元に戻っていきました。

これは、木が「何かが起こる」と感じ取り、体内の活動を調整していた証拠かもしれません。

しかも驚いたことに、古い木のほうが、より早く・はっきりと反応していたのです。

研究チームは、この結果について、「古木が数十年分の環境記憶を保持している証拠」だと主張しています。

画像
日食の時、トウヒの木は古木から若木へと何らかの情報を伝えているのかもしれない / Credit:Canva

さらに興味深いのは、まるで「日食のお知らせ」が広がっていくように、波のように電気信号の変化が、複数の木々に広がっていったということです。