第3のカテゴリーは年齢だ。ヨハネ・パウロ2世が27年間と長期在位だったこともあって、バチカンでは長期政権が考えられる若い枢機卿には抵抗が強い。コンクラーベで選出される枢機卿は70歳台がいいという暗黙の了承がある。その点、声望のあるエルサレム・ラテン典礼総大司教のピッツァバッラ枢機卿は60歳だ。若すぎる。フランシスコ教皇の場合、選出された時は76歳だった。ヨハネ・パウロ2世後に就任したドイツ人のべネディクト16世も78歳だった。同16世の場合、本格的な教皇選出までのショートリリーフ役として選ばれた事情がある。
最後は神の関与だ。枢機卿が様々な思惑や外交的な見通しから次期教皇を選ぼうとしても、最後は神がペテロの後継者を決めるというのだ。人知を超え,神が教会を指導するという一種の信仰告白だ。
フランシスコ教皇が前回のコンクラーベで多数の枢機卿の心を捉えたのは、コンクラーベ開催前に開かれた枢機卿会議で、「教会は病んでいる」と強調し、サロン風の教会ではなく、外に飛び出す教会になるべきだと檄を飛ばしたからだ。それでは、トランプ氏にはローマ教皇になるチャンスは現実的には皆無だが、トランプ氏のキャッチフレーズ、メイク・アメリカ・グレート・アゲイン(MAGA)に倣って、メイク・バチカン・グレート・アゲインと叫ぶ枢機卿が出てくれば大きな波乱を呼ぶだろう。

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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年5月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。