そこで、今回のシドニー大学の研究者たちは120人の大学生を対象に、「人間の空間記憶力」と「食生活」の関係を科学的に調べようと考えました。
彼らが用意したのは、仮想現実(バーチャルリアリティ)で再現された巨大な迷路。
参加者はVRゴーグルを装着し、まるでゲームのような空間の中で「宝箱のある場所」を探します。
迷路にはランドマーク(目印)がたくさんあり、これらを覚えながら「どの方向に進めば宝箱にたどり着くか?」を学習していきます。
参加者はこの迷路を6回探索し、宝箱を見つける必要がありました。4分以内に宝物を見つけた場合、次の試験に進むという具合です。(出発点と宝箱の位置は、各試行で一定)
7回目の試験では、仮想迷路から宝箱が取り除かれ、目印だけを頼りに宝箱の位置を思い出し、印をつけるよう指示されました。
こうした試験は、私たちが現実の街で「以前来たことがある場所」を記憶を頼りに再訪することに似ています。
さらに、研究チームは参加者に食事アンケートを実施。
ここで得られたデータをもとに、「脂肪の多い食事」「糖分の多い食事」「両方多い食事」の3タイプに分け、迷路の成績との関連を分析しました。
また、短期記憶や計算力といった「一般的な頭の良さ」が影響していないかも調べるため、「数字を逆から言う」ようなワーキングメモリテストも行いました。
こうして、「空間記憶力」と「食生活」の純粋な関係性を調べる準備が整いました。
高脂質・高糖質の食事は「空間記憶」に悪影響を及ぼす

実験と分析により、研究チームはある傾向を発見しました。
ジャンクフードの摂取頻度が高い人ほど、宝箱の位置を正しく思い出すのが苦手で、迷路試験での成績も明らかに悪かったのです。
それぞれの試験において、参加者みんなは徐々に上達しましたが、高脂肪・高糖質食品を頻繁に食べていた学生たちは、そうでない学生に比べて、成績の伸びが遅く、7回目の試験でも宝箱の位置を正確に思い出せない傾向が見られました。