一方、アメリカ側はカナダとケンカをしてもメリットがないのは自明なのです。トランプ氏の熱量が冷めた時、アメリカはカナダの信認を失う一方でカナダはより強固な基盤づくりに励むという構図を予想しています。

またトルドー政権の時、同氏の一種の外交下手からインドと中国との関係が大いにこじれました。カーニー氏はまずはインドとの関係修復を目指す気がします。今は中国外交を優先するときではないし、先日話題に振ったように世界の工場が中国からインドにシフトしていること、またバンクーバーは北米最大のインド人コミュニティを誇るなどインドとの関係は好む好まざるにかかわらず、非常に深いものになっています。

ロジスティックスでも変化は起きる可能性があります。アメリカ経由でカナダやメキシコに流れていたものがカナダやメキシコ直輸入に変わる点です。カナダはアメリカの1/10の人口しかいないため、事業所やハブ、管理拠点をアメリカに置き、カナダにはアメリカ経由で流れるという仕組みがかなり存在します。日系企業でもアメリカ法人の下にカナダを置くケースがあります。ところが事業者は政治リスクを今回嫌というほど感じたわけで「アメリカ経由」から「カナダ、メキシコ直」に変化することも大いにあるとみています。

トランプ氏の政権運営の真価は就任6か月後の7月中旬に再評価することになるでしょう。その際に一番注目されるのがまず政権幹部で脱落者が出ないのか、であります。既にマスク氏と国防長官のヘグセス氏の処遇が注目されます。またアメリカ外交がこれほど無能になったのは私が知る限り初めてであり、個人的にはルビオ国務長官への評価が気になるところです。バンス副大統領は特に人格的に論外でお調子者でしかないとみています。

ピート・ヘグセスアメリカ合衆国国防長官Xより

私がカナダにいることもありますが、かなり公平に見てもアメリカは厳しい政策運営と世論の厳しい声にさらされる一方、カナダは着実に歩を進めるとみています。