ヨーロッパ・アルプス山脈。その険しい山々に、古くから奇妙な生き物の存在が語り継がれてきた。猫のような頭に、蛇やトカゲのような体を持つとされるその生物の名は「タッツェルブルム」。時にシュトレンヴルム、あるいはベルクシュトゥツとも呼ばれるこの未確認生物(UMA)は、果たして伝説上の存在なのか、それとも未知なる現実なのか?

多様な呼び名とアルプスの伝説

 タッツェルブルム(Tatzelwurm)という名前は、ドイツ語で「爪のある虫(Wurmは爬虫類なども含む古い言葉)」といった意味合いを持つとされる。主にドイツのバイエルン地方で使われてきた呼称だが、現在ではオーストリアなどでも広く知られている。

 しかし、地域によって呼び名は異なる。スイスのベルンアルプス周辺では「シュトレンヴルム(Stollenwurm)」、すなわち「穴(トンネル)の虫」あるいは「短い足を持つ蛇」と呼ばれてきた。オーストリアでは古くは「ベルクシュトゥツ(Bergstutz)」、「山の切り株」を意味する名で呼ばれていたという。フランスアルプスにも「アラッサス(Arassas)」と呼ばれる類似の伝説生物が存在する。このように、アルプス山脈の広範囲な地域で、タッツェルブルム、あるいはそれに類する存在の伝承が確認されているのだ。

猫顔の未確認生物「タッツェルブルム」アルプスに潜む“毒を吐く伝説の怪物”の謎
(画像=ベルクシュトゥツ(シュトレンヴルム) Karl Wilhelm von Dalla Torreによる1887年の論文「Die Drachensage im Alpengebiet」、CC BY-SA 4.0、出典,『TOCANA』より 引用)