職人が月収100万円を得るケースとは?
建設業界をめぐっては、低賃金というイメージも持たれがちだが、前述のとおり22歳の職人が年収1200万円を得るケースもあるという情報も報告されている。建設業界関係者はいう。
「可能かといわれれば、可能だと思います。建設会社の社員という身だと難しく、やるとすれば一人親方、つまり個人事業主というかたちです。年収1200万円ということは一月あたり100万円ですが、たとえばリフォーム業界は粗利率は3割ほどといわれており、500万円の工事を受けると粗利が150万円くらいで、そこから工具や自動車の維持費などの経費を差し引いて100万円というイメージでしょうか。つまり毎月コンスタントに500万円の売上をあげる必要があり、おいしい工事案件を優先的に回してくれる事業者との太いパイプを持っている必要があります。
職人の工事の受け方には大きく2つあり、一つは『手間受け』といわれる日単位の労働です。日当の相場が2万5000円~3万円ほどなので、月収100万円というのは難しいのではないかと思います。もう一つが、工事一式を受注して材料や職人をすべて段取りする『請け負い』という形態ですが、多くの職人を引っ張ってくることができる力があったり、一人で大工仕事や水回り、電気関連の仕事をこなせる多能工の職人だと、請け負う工事金額も上がるため利益率が高くなり、月収100万円というのもみえてくるかもしれません。ただ、一つの職種で信頼されるようなレベルに到達するまでには最低でも4~5年以上はかかるので、多能工として活躍するためにはそれなりの年数が必要になります」
建設業界全体の給与水準はどうなっているのか。
「国税庁『民間給与実態統計調査結果』によれば、建設業の平均給与は全産業平均より高くなっており、大手企業や、全体の2割ほどを占める、積極的に働き方改革やデジタル化に取り組み業績が伸びている優良企業では、管理職年収700万円レベルは一般的になってきます。そのため、現在では地銀や地方公務員、介護職からの転職も増えています。また、今では工業高校の求人倍率は10倍以上、高専は20倍以上と高い水準になっていますが、建設業界は技術と専門性が求められる世界なので、多くの工業高校・高専卒業者が大手の工事会社や優良企業に就職して、大卒者並みの給与を得ています。他方で、製造業では大手企業の正社員が半数を超えるのに対し、建設業は資本金1,000万円以下の小規模企業(家族経営の会社など)で勤務する人が就業者の4割もいます。この4割の人の給与水準が上がっていないことが課題です。また、業界努力で死傷労災件数もピーク時から9割近く減っています」(24年6月3日付当サイト記事より/クラフトバンク総研所長の高木健次氏)