私は上述の記事は全般的に私の価値観に非常に近いものがあり、全面的に賛同できるのですが、最大のキーワードは「人間は社会的な生き物であり、お金のためだけに働いているのではない」という点です。
私の周りでも早くリタイアしたいという方は何人かいらっしゃいます。その理由は概ね「サラリーマンの性」に対する長年の我慢や鬱積することであり、解放されたいというお気持ちの方が多いように見受けられます。40年間も組織内のガバナンスや人間関係の中にいればうまく立ち回ったり出世した人ならともかく、出向や転籍を経ながらも住宅ローンを返済し、家族を養い、子供を社会に旅立たせるという人間生活の使命において選択肢すらない方もいらっしゃるわけです。「私も雇われの身ですから」というのは日本にいると本当によく耳にする言葉なのです。
こう見るとお金のためだけに働いていないというのは美辞麗句で、実態はリタイアの年齢になるとボロボロになっているケースもある訳です。これではセミの抜け殻のようなもの。ならばまだ生気がある50代のFIREには意味があるだろう、と。おまけに年収カーブは40歳代の終わりから50代の初めをピークに下がるのです。経験値を持っているはずなのに働いても年収が下がるなんてそんな馬鹿な話はないだろう、というお気持ちを汲めばFIREする方の主張もごもっともと思います。
とすれば「人間は社会的な生き物」という部分において実は社会人で前線に立つ40年間こそ、社会的な生き物として国家を支えてきたのだ、とすればリタイア後ぐらいはのんびりさせてよ、でよいのだと思います。
但し、ゆっくりしすぎるとボケてしまうというリスクがあります。特にお勤めの方の中には頑張りすぎて「燃え尽き症候群」になる方もいらっしゃるでしょう。そんな方には家庭菜園など「土いじり」はよいと思います。「人は土に還る」という言葉通りなのです。私は経営するシニア向けグループホームの庭に家庭菜園の場所を作ったり当初の工事で十分にできなかった植栽の作業を少しずつやっています。土を動かし、芝の種をまき、散水し、この時期は1年草を植える準備をしたりするとき、「土いじりはなかなかいいものだ」と思います。正直、この年齢まで鍬(すき)を使ったことはなかったし、それを使う日が来るとも思いもしませんでした。