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財政制度等審議会の診療報酬削減が話題になっているが、中小企業の廃業率が3.3%なのにクリニックは0.5%に過ぎず、開業医の平均収入が約2800万円、勤務医が1400万円、勤務医のほうが高度な医療を提供していることを考えると、7割以上を事実上の公費負担している事業において甘やかしすぎたのは事実。

「経営者をやるとリスクがあって、その分高収入をえられるのは民間の普通の企業も含めて当然じゃないですか」「大企業のほうが高度な仕事をしているのも同じです」という意見も多少の理解はできる。

しかし著しく低い廃業率と低リスクさ、そして大半が事実上の公費負担であり、ひどい場合には患者(=客)が1割負担か0割負担であることを考えると、ほぼ公務員的な存在に近いのに高所得が維持され続ける仕組みになっているわけで、しかも検査内容や診察内容も自分が勝手に決めることができ、不必要な検査もやり放題で無限の打ち出の小槌を手にした中小企業のようになっている。

安定して絶対に儲かる仕事というのは世の中に存在しないのに、聖域として守られてきてしまったのも事実で、トップ層の中・高校生たちが科学技術を極めて新しいイノベーションを起こそうとか、世界で売れる製造業をやろうとか考えなくなってもう何年経っただろうか。

結局、国と国民に金がなければ医療は受けられず、基本として世界と競争できる科学技術産業があるのが土台にあってその上に立つものであるにもかかわらず、土台に人が集まらなくなってしまうのは国家として競争力低下に拍車をかけたにすぎない。

保険診療の報酬を減らせば美容クリニックに流れる、という意見もあるが、多額の金をかけてそんな人材を育成するのは国家にとって全く利益にならないのであるから、自由診療に対しても国家の指定した価格に制限をかけたり、または美容クリニックをやりたいなら10年20年大規模病院で勤務医として修行をしなければならない等の制限をかけたら良い。