この結果は、突然変異の66%が中立突然変異であり、生物に目だった変化を起こさないことを示しています。

生物たちは変異に対する堅牢性を高めることで、種としての体面を保ち、子孫たちが無秩序な姿になるのを防いでいたのです。

ただ現在のところ、この堅牢性がどの程度で、最大値のようなものが存在するのかは不明でした。

そこで研究者たちは特定の遺伝子から作られるタンパク質と低分子RNAを対象に、最大でどれくらいの変異を、目立った変化なしに蓄積できるかを数学的に分析することにしました。

すると非常に興味深い結果が得られました。

堅牢性の最大値は「目立った影響をおよぼす変異の割合(中立突然変異でない割合)」の対数(log)に比例するという、極めて簡素な数式で描けることが判明したのです。

また「堅牢性の最大値がフラクタルな特性を持つ」ことが判明します。

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フラクタルとは上の図のように「部分の構造」と「全体の構造」が同じであり、どれだけ大きくなっても全体のパターンが変わらない特性をもつものです。

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Credit:Canva . ナゾロジー編集部

生物の場合では、ロマネスコの一部をとってそれを拡大してみても、ロマネスコ全体と同じような形を持っていることがわかります。

「堅牢性の最大値がフラクタルな特性を持つ」というのは、細胞内の小さな領域から体全体に至るどのスケールで見ても、堅牢性の最大値が同じ数式で表記できることを示します。

小さな領域と大きな領域では関わる数式が別物だと思われていましたが、生物の突然変異に抵抗する堅牢性は、どの倍率レンズを使って観察しても、同じだったわけです。

単一の数式により生物の進化法則の一部が理解できるという結果は、進化が数論的な現象であることを示します。

数論は宇宙の構造だけでなく生物の体のパターンや進化法則も支配する、究極の法なのかもしれません。