そこで消化器系の問題を疑ったチームは、クジラの腹部を切開して腸内を調査。
すると結腸のあたりに大きくて硬い岩のようなものが見つかりました。
これがまさに直径60センチ、重さ9.5キロの巨大な「龍涎香」だったのです。

マッコウクジラはこの龍涎香が詰まっていたことで通常の食事ができなかったと考えられます。
ロドリゲス氏によると、今回見つかった龍涎香は50万ユーロ以上(約7700万円)の価値に達するという。
では、龍涎香とはそもそもどうやって作られるものなのでしょうか?
「龍涎香」はどうやって作られる?
龍涎香は英語で「アンバーグリス(Ambergris)」と呼び、”灰色の琥珀”を意味する古フランス語のambre gris(アンブル・グリ)に由来します。
アンバーグリスを作るのは絶滅危惧種に指定されているマッコウクジラのみです。
しかも全てのマッコウクジラから得られるのではなく、約100頭に1頭の割合でしかアンバーグリスは作られません。
こうした要因もアンバーグリスの希少価値を高めている理由の一つです。

さて、ハクジラ類の最大種であるマッコウクジラは普段、歯を使ってイカやコウイカを大量に食べています。
しかしそのほとんどは消化できずに吐き出されてしまいますが、一部が未消化のまま体内に残されます。
イカには硬いクチバシがあるため、これが塊になると柔らかな胃や腸を傷つけかねません。
そこでマッコウクジラは彼らに特有のワックス状物質を分泌し、未消化の塊を包み込みます。
そしてワックスに包まれた塊が排出されないと、腸管に沿って移動し、直腸を塞ぐように塊がどんどん溜まって結石化していきます。