このスキームを限界と捉えているビジネスマンで不動産屋出身のトランプは、各国とディールを結び世界覇権からは一段降りた位置から、盟主として収まり世界の均衡を実現する方法への転換を図っている。こうした背景の下に、各国は従来の「自由貿易の理想」とトランプ流の「結果バランス」との間で、選択を迫られている。

米中の攻撃手段と弱み

ここで今一度、米中双方の攻撃手段と弱みを整理してみると以下のようになる。

米国の攻撃手段

中国製品への高関税措置の強化・継続 先端技術(AI・半導体・量子)輸出の全面規制 他国と連携した中国孤立化、米国陣営側からのデカップリング 「武漢研究所からの新型コロナ流出」責任の追及 中国企業の米国市場での上場廃止

米国の弱み

インフレ圧力の再燃(関税分が消費者価格に転嫁) 金利上昇による財政圧迫と株式市場の不安定化 “America First”の再演による国際的孤立化懸念 米国債の大量保有国=中国というリスク(約7500億ドル相当保有)

中国の攻撃手段

レアアース輸出制限(世界供給の約70%を占める) 米企業に対する行政報復措置(Apple、Teslaなど標的化) 「自由貿易」を錦の御旗にした、他国と連携した米国孤立化、中国陣営側からのデカップリング BRICS新通貨構想やデジタル人民元によるドル代替の試み 米国債売却による市場揺さぶり

中国の弱み

不動産バブル崩壊後の成長停滞(大手デベロッパーの債務不履行続出、GDPの約30%を占めていた不動産関連が収縮) 若者の失業と高齢化の同時進行(都市部16〜24歳の失業率は21.3%:2025年2月、65歳以上の人口が2億人超) 米技術遮断によるハイテク産業の頭打ち、資本流出 習近平の権力過集中による「責任分散不能」な政治構造、習近平への軍部の静かな反乱、権力基盤の動揺 内政の不満はSNSでは抑え込まれているが、地方幹部や都市インテリ層の離反が静かに進行

相互確証破壊(MAD)と世界が恐れる「暴発」