私はトランプ戦法のある側面は、「米国内が内乱状態に陥っており、そのはけ口として他国との関税戦争を仕掛けている」のだと思います。米国では1861ー1865年に南北戦争という内戦が勃発しました。米国北部は保護貿易主義(欧州からの工業製品輸入に対抗)、南部は自由貿易主義(黒人奴隷を使った綿花生産、輸出促進)という対決の構図でした。
トランプ氏は米国の製造業の復活をめざし、そのために関税引き上げという保護貿易主義をとっています。なにやら南北戦争当時を想起します。世界のGDP(国内総生産)に占める米国の比率は26.5%で1位、中国は16.6%で2位で、米国が首位です。
その一方で、国内格差は拡大しています。資産の上位1%が全体に占める比率は34%で年々、拡大しています。最も豊かな国なのに、米国が被害者のように発言するトランプ氏は意図的に事態を誤認しているのでしょう。中国は2位の32%です。
GAFAM(グーグル、アマゾンなど)というITや金融系の経営者、幹部らに富が集中し、白人を含む製造業関係の人たちは、海外からの輸入拡大によるラストベルト(錆びついた工業地帯)化で豊かでなくなり、トランプ支持、共和党支持に回っています。
格差拡大が背景にある共和党対民主党、国内の分断は、本来なら米国内の所得再配分政策で格差を是正すべき課題です。それが簡単にはいかないので、米国内の内戦状態を、対外的な関税引き上げ政策に転嫁しているとみます。国内問題であるはずの問題を国際問題化しているのです。
内戦、内乱のような状態は、いくつでも観察されます。景気低迷を恐れるトランプ氏がパウェル・FRB議長の解任をちらつかす。政治から中立であるべき中央銀行に政治が介入することを市場が警戒(相場の下落)を強めると、解任発言を撤回する素振りをみせました。政治対中央銀行の内戦です。
トランプ政権はハーバード大への助成金凍結問題も引き起こし、全米の大学の学長らが抗議で結集する。民主党系はエリートの私立大学の出身者が多く、共和党系は州立大卒が多く、ここにも米国の分断が見られます。政権内部でも、閣僚らの対立、ののしりあいという内戦が絶えません。