韓国では2015年に駐韓アメリカ大使への襲撃事件もあったが、この犯人はかつて駐韓日本大使に投石テロをしかけたというのに、執行猶予がついて収監されていなかった。安重根というテロリストを民族的英雄に祀り上げている国では、こうした事件が起きるのは必然なのである。

当時の朴槿恵大統領の両親も政治的動機から暗殺されましたが、良いテロと悪いテロがあるという限りは、誰もが納得する悪いテロはないということになるし、テロに走れば英雄になれると思う韓国人は今後も出現していくだろう。

中国政府も同様で、もし安重根が英雄なら、中国の指導部を狙うウイグルやチベットのテロリストも英雄だということになってしまう。天に唾するというべきだ。

明治政府が朝鮮半島を支配したかった理由は、朝鮮半島が中国やロシアの領土になったり、あるいはその傀儡国家になったりして、日本の安全を脅かすのを避けるためである。「収奪が目的だった」などということはありえない。そもそも朝鮮には、収奪したくなるような天然資源もなければ、豊かな農業もなかった。

日本が朝鮮に願ったのは、独立国であるにせよ併合するにせよ、朝鮮が経済的に発展して、人心が安定することだったことに疑いはない。

日本としては、李王家が自ら日本のような近代化路線を採用してくれることを望んだが、彼らにとって魅力的でなかった。高宗としては、伊藤からいくら明治天皇のようになれといわれても、立憲主義によって権力を制約され、贅沢ができない明治天皇のようにはなりたくないと思ったのである。

日本の援助で創設された近代的軍隊が旧式軍隊に追放された「壬午事変」(1882年)がケチのつき始めだが、福沢諭吉に私淑した金玉均の追放と暗殺など、王朝側から何度も改革の芽が摘まれてきた。

その結果、日清・日露戦争が起きてしまったわけで、英米などの支持を得て朝鮮を日本の保護国とし、朝鮮統監として伊藤博文が乗り込んだ。

ハルビン駅に降り立った、暗殺直前の伊藤博文