調査にあたってまず、メスと一度も接したことがないオスマウスを用意しました。
そして生涯ではじめてメスとあったときに、どの脳回路が強く活性化するかを調べました。
これまでの研究で、離乳してから一度もメスと出会ったことがなくても、オスはメスを交尾相手として認識できることがわかっています。

結果、偏桃体にある境界条床核(BNST)と呼ばれる脳領域からサブスタンスPと呼ばれる特殊なシグナル伝達物質が放出されていることが判明。
また放出されたサブスタンスPは視床下部にある視索前野(POA)と呼ばれる脳領域を強く活性化させていました。
そしてこの回路が活性化してから約10~15分後に、オスマウスはメスにマウンティングを行いペニスの挿入と射精を行っていることも判明します。
つまりメスがいるという認識が偏桃体(回路の前半部分)からサブスタンスPという特殊なシグナルを放出させ、それが視床下部(回路の後半部分)に届くとオスの性欲のスイッチが入り交尾が起こっていたのです。
この結果は、サブスタンスPを仲介にした脳回路がオスの性欲の源泉であることを示唆しています。
そこで次に研究者たちは、この脳回路に介入して操作できるかを試してみました。
実験にあたってはまず、マウスの頭蓋骨に穴があけられ、回路の後半部分にあたる視床下部の視索前野(POA)に対してサブスタンスPを直接注入しました。
つまり正規の入力ではなく、偽の入力を回路の後半部分に流すのです。
するとオスマウスは即座にメスマウスに飛びついて交尾をはじめました。
