アート、マーケティング、そして都市伝説。これらの境界線を曖昧にする、一枚の不気味な呪いの絵画が、インターネットオークションサイト「eBay」を舞台に世界を震撼させたことがある。その名は『The Hands Resist Him(直訳すると“手が彼に抵抗する”)』。

eBayを騒然とさせた不気味な出品

 その呪いは2000年2月に始まった。eBayに、奇妙で不穏な雰囲気を漂わせる一枚の絵画が出品されたのだ。描かれているのは、とある玄関ポーチ。暗い窓の前には少年と一体の人形が立っている。窓の向こうには、かろうじて数多くの子供たちの手が見えるだけだ。人形の眼窩は虚ろで、少年の目もほとんど見えないが、その視線は鑑賞者をまっすぐに見据えている。少年だけが照らされ、人形は壊れたバッテリーのようなものを持っている。そして、欠けた月がすべてを見下ろしている。開始価格は199ドルだった。

 この絵画がeBayに出品された際に添えられた説明文が、すべての始まりだった。所有者だと名乗る人物は、廃墟となったビール工場でこの絵画を発見したと主張。しかし、家に持ち帰って以来、家族に次々と不気味な出来事が起こるようになったというのだ。

 説明文にはこう書かれていた。「ある朝、4歳半の娘が、『絵の中の子どもたちが喧嘩して、夜中に部屋に入ってくる』と言い出したのです」。この絵画は、出品からわずか5日間で3万回以上も閲覧された。