読書によって得られる恩恵が「読む層」と「読まない層」で大きな格差となっているのです。
さらに、読書習慣の人口層ごとの違いも明らかになりました。
もともと女性の方が男性より読書率が高く、高齢者ほど若年層よりよく読書をする傾向がありましたが、こうした差は20年間で大きく変わらず維持されました。
一方で人種や学歴、所得、地域、健康状態による差は拡大しています。
例えば2023年時点では、黒人の読書率は白人の約半分程度(その日の読書実施率が白人より45%低い)というデータが得られています。
学歴についても差が顕著で、大学院卒など高学歴の人は、高卒程度の人より約3倍も読書習慣があることが示されました。
所得が高い層も低所得層より読む割合が高く、都市部在住者は地方在住者より読書率が高い傾向が強まっていることがわかりました。
また障がいを持つ人は健常者より読書する割合が低く、このギャップも拡大していました。
このように、娯楽読書離れの傾向は社会の中で一様ではなく、特に社会的・経済的に不利な立場にある人々やマイノリティー層で顕著であることが示唆されています。
スマホ時代、読書はどう生き残る?

今回の研究は、国の大規模調査データを用いることで米国人の読書離れが過去20年にわたって着実に進行してきた実態を裏付ける強力なエビデンスを提供しました。
従来の断片的な調査では把握しにくかった長期トレンドを明らかにした点で、その意義は大きいと言えます。
「29%から18%へ」という数字が示す通り、もはや日常的に本を読む人は少数派になりつつあるのが現状です。
この結果について研究チームは「読書離れの傾向は幅広い恩恵をもたらす読書活動が軽視されつつあることを意味しており憂慮すべきだ」と述べています。
読書には前述したような多くの利点があるだけに、このような習慣の衰退は個人の教養や心の健康だけでなく、社会全体の文化的・知的基盤にも影響を及ぼしかねません。