高校生年代についても、1970年代後半には毎日何らかの読書をしていた17~18歳が6割に達していましたが、2016年にはわずか16%と激減しました。

一方で調査手法によっては異なる傾向も報告されており、ピュー研究所の世論調査では「過去1年間に本を読んだ成人」は2010年代を通じて約75%で安定しているとの結果もありました。

こうした相反するデータの背景には、調査方法の違いがあると考えられます。

自己申告によるアンケートでは「本当は読んでいないのに読んだと言ってしまう」社会的望ましさバイアスや、1年分の読書を振り返る記憶の不正確さなどが影響し、調査ごとに結果にばらつきが生じていた可能性があります。

また青少年に限定した研究は多い一方で、成人全体を対象にした長期的なデータは限られていました。

このような背景から、今回の研究チームは全米規模の時間調査データを用いて、米国人の娯楽読書習慣が本当に減っているのかを包括的に検証しました。

特に過去20年間(2003〜2023年)の長期トレンドに着目し、読書離れの実態とその傾向が年齢や性別、人種・民族、学歴、所得、居住地域(都市か地方か)、健康状態といった人口学的要因によってどう異なるかを詳しく調べることが目的です。

ビッグデータで判明:読書率年2%ずつ蒸発

ビッグデータで判明:読書率年2%ずつ蒸発
ビッグデータで判明:読書率年2%ずつ蒸発 / Credit:Canva

研究チームは米国労働省が実施する「全米時間利用調査 (American Time Use Survey, ATUS)」のデータを分析しました。

ATUSは全米から抽出した15歳以上の人々に対し、「昨日24時間のうち何にどれだけ時間を使ったか」を細かく記録してもらう大規模調査で、日々の行動実態を把握できる点が特徴です。

今回の分析では、2003年から2023年までの延べ23万人以上(236,270人分)のデータを用い、その中から「娯楽目的での読書」に該当する行動(仕事や勉強以外の読書)があったかどうかと、その時間を抽出しました。