実験でもわずかなノイズやパラメータの揺れが加わっても、光の一瞬の輝きがほとんど損なわれないことが確認されました。

また、一瞬だけ光を安定して出現させられるという特性は、通信やイメージング、レーザーなど多くの分野に応用できる可能性を秘めています。

バーミンガム大学のセバスチャン・ヴァイデマン博士は「このしくみを使えば、複雑な環境でも光パルスを正確に扱えるかもしれません。

将来的には超高速通信や新種のレーザー技術にも発展しうるでしょう」と期待を語っています。

実際、形の安定性がもたらす“外乱に対する強さ”は、素早い信号処理や高精度の制御が必要な分野にとって大きな魅力でしょう。

さらに、時間という軸を本格的に取り入れた研究は、「原因があって結果がある」という私たちの当たり前の因果律にも新たな光を当てます。

時間を単に流れるものと考えるのではなく、そこに“道”や“境界”があるとしたら、逆向きからは干渉できない一方通行のしくみや、外の世界から切り離された特別な領域が作られるかもしれないのです。

SF作品のように時空を自在に操作するわけではありませんが、今回の成果は、“古くからあった時間”を今あらためて吟味することで、意外な現象や技術が次々に生まれる可能性を示唆しています。

実際、何もないところから光がわき起こり、また消えていくシーンを目撃するインパクトは大きく、研究者の間ではさらなる探究の機運が高まっています。

今後、この“形の安定性”をともなう時空の研究が進めば、思いもよらないブレイクスルーや新技術が飛び出してくるでしょう。

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元論文

Space-time-topological events in photonic quantum walks
https://doi.org/10.1038/s41566-025-01653-w

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。