前後に何も検出できなかったのに、時空の結節点だけで閃光が走るというのは素直に驚きです。

しかもこの閃光は「因果律」による特殊な保護効果も観測されました。

閃光の発生する時空点に対して、時間的に過去側からは光を送り込んでその状態を励起できますが、未来側からいくら刺激してもその状態を起こすことはできません。

いわば時間の矢に沿った方向にのみ反応し、逆方向からの影響は受け付けないのです。

このような因果性による一方通行の振る舞いも、従来の空間トポロジーにはないユニークな効果として確認されています。

出現した光は既に「因果律で武装」していた  

出現した光は既に「因果律で武装」していた  
出現した光は既に「因果律で武装」していた   / Credit:Canva

今回見つかった「空間と時間が交わる一点に光が突然出現する」という現象は、これまで「単に流れているだけ」と思われがちだった時間を、物理学の視点で大きく見直すきっかけとなる重要な成果だといえます。

空間だけでなく時間の次元も積極的に活用することで、“形の安定性”を活かした全く新しい光のふるまいを引き出せることを、実験的に示したからです。

実際、ほとんど“無”の状態から光が立ち上がるように見えるのは魔法やSFのようですが、その裏には厳密な数学的性質が働いています。

研究を率いたアレクサンダー・ザメイト教授は「初めに何もありませんでした。 すると物理学が『光あれ!』と命じ、時間と空間の交差点に光が現れたのです」と語り、この出来事が偶然ではなく必然であると強調しています。

さらに研究チームによると、「ここで光を発生させる」という命令は“特殊な形の指標”によって支えられており、この数値が変わらない限り、少々の外的な乱れではこの現象は崩れにくいのだといいます。

ロストック大学のヨシュア・ファイス博士は「従来の光の状態は何かしらの誤差に弱かったのですが、こうした強さをもつ現象は非常に画期的だと思います」と強調しています。