たとえば、ごく単純なイメージを挙げると、「何秒おきかに一瞬だけ光が強くなって、またすぐ弱くなる」という変化を“永遠に繰り返す”ような状態を考えてみてください。

これだけなら「振動」や「パルス」と呼べるのですが、さらに「その繰り返し方が非常に規則正しく、全体として安定している」などの特徴を備えていると、“結晶”に例えられるほど秩序だった構造が生まれているとみなすことができます。

この「時間に刻まれた繰り返し」がもたらす最も興味深い現象のひとつが、「エネルギーに不思議な“すき間”ができる」という点です。

ふつうは、光や電子などのエネルギーは連続的に分布できると思われがちですが、時間軸にも繰り返し構造があると、ある範囲のエネルギーだけが取りにくい(あるいは使えない)状態が生まれます。

空間結晶で見られる“すき間”と似ていますが、それが時間の繰り返しによって作られるという点が大きく違うのです。

ではさらにこれに“空間の繰り返し構造”も組み合わせるとどうなるでしょうか。

たとえば「空間的には格子状に並んだ構造を持ちつつ、時間軸にも周期的な変化がある」――いわば空間と時間が両方ともリズミカルに繰り返されるようなシステムを想定してみます。

これが俗に「時空間結晶」と呼ばれる概念です。

ここでは、“空間”と“時間”という二つの要素が複雑にからみ合って、単なる空間結晶でもなく、単なる時間結晶とも違う、まったく新しい世界が開けると期待されています。

時空間結晶が興味深いのは、私たちが普段あまり意識せずに使っている「空間」と「時間」が絡み合うことで、想像を超えた複雑さを生み出す可能性があるからです。

空間結晶なら場所による繰り返し、時間結晶なら時間による繰り返しをそれぞれ扱うだけですが、時空間結晶ではそれらが同時に存在するため、ありとあらゆるタイミング・あらゆる位置での振る舞いを考慮しなければなりません。