私は先日「基軸通貨ドルは意図的にいじるべきではない」と申し上げました。理由はマネーが既に逆流、つまりout-flow(流出)しつつあるからです。例えばトランプ氏の挑発に怒り狂ったカナダはアメリカ向けの投資を少しずつ引き上げています。そのマネーはカナダの株式市場に還流しているのでカナダの株価は全般的に落ち着いているのです。日本も同じでしょう。投資マネーは世界をうろつくのですが、アメリカに帰還できないマネーが落ち着きどころを探す中で日本をとりあえず中継地点にしてもおかしくない状況です。

ドル指数はドルの強さを表すものですが、ブルームバーグのドルインデックスでは現在98-99程度。トランプ氏が大統領に就任した頃は109でしたので3か月で11ポイント落としているのです。チャート的には90が大きな抵抗線でそこまでは何もないのでトランプ劇場が続くならあと10%の下落を見込むことができます。とすれば乱暴な類推ですが、ドル円が140円から10%下落で126円というのがボトムラインとして引き出されます。

加藤財務大臣とベッセント財務長官の為替分野の交渉が今日、明日にも行われると思いますが、トランプ氏が朝令暮改の方針を打ち出すのでアメリカとしてはドル安よりいったん、ドルの安定化を望むのではないかと思います。よって日本にアメリカ国債の引き受けを通じた安定的パートナーになることを期待する形で収まるのではないかと予想しています。上述の126円と言うのはあくまでも仮定の話であり、トランプ氏が市場の不信をそこまで放置することもないだろうと思っています。

ベッセント財務長官 同長官Xより

ところで通貨の価値は高い方が良いのでしょうか?安い方が良いのでしょうか?これはどこを基準に見るか次第だと思います。ただ、日本のように成熟国家になれば自国通貨は安いより高い方が良いというのが私の意見です。通貨は国家の強さともいえるのです。もしアメリカが衰退するなら誰がそのバトンを引き受けるのか、という点で80年代に日本がバトンを受けそこなったことにいまだに深い失望を感じているのです。いわゆる円の国際化であり日本がアジア、ひいては世界の盟主としてリーダーシップをとるという夢物語です。