実験では、これらの参加者に、イスラエル国内で多数派であるユダヤ系イスラエル人(自分たちと同じ出自)と、少数派であるパレスチナ系イスラエル人(自分たちと異なる出自)の人物が、自らの感情的な体験を語る短いビデオクリップを視聴してもらいました。
その上でチームは、参加者が話者の感情をどのように感じ取ったか、話者自身が報告した感情状態と比較。
ここでは、相手の感情をどれだけ正しく理解し、共感できるかを調べています。
それと並行して、ビデオを見た参加者自身の感情反応を評価し、「知的謙遜」のレベルも質問票で測定しました。
その結果、知的謙遜のレベルが高い人ほど、他者の感情をより正確に読み取り、共感する能力が高いことが示されたのです。
特に、自分たちとは出自が異なり、ときに敵対することもあるパレスチナ系イスラエル人の話者のビデオを見た場合に、より顕著な効果が見られました。
つまり、知的謙遜が高い人ほど、歴史・文化的背景の異なる人々の事情を汲み取り、尊重する力が強かったのです。
さらに、知的謙遜のレベルが高かった人ほど、自らが感じる苦痛や不安、怒りなどの感情ストレスが少ないことも明らかになりました。
「相手の感情を理解して共感しながら、自らの感情的苦痛は少ない」、この心理状態を研究者らは「共感的回復力(empathic resilience)」と呼んでいます。
では、なぜ知的謙遜の傾向が強い人ほど、共感的回復力が高くなっていたのでしょうか?
なぜ知的謙遜は「共感力」や「回復力」を高めるのか?
これについては「自分の限界を認めることで他者の視点に開かれる」ことが大きな要因として推測されています。
知的謙遜とは、自分の意見や信念が間違っているかもしれないと認める姿勢のことでした。
この態度により、自分とは異なる立場や感情を持つ人の話に対して「批難」や「反論」ではなく、「理解」や「協調」の姿勢で向き合うことができるのです。