「相対的優位」とは、自国と相手国の力関係に着目し、自国が他国より優位に立ち続けることを意味します。
極端に言えば、自国も痛みを伴っても相手にそれ以上の打撃を与えれば、相対的な地位を保てるという考え方です。
貿易戦争でも双方に損失が出ますが、「中国よりアメリカの方がダメージが小さければ勝ち」という発想が根底にあると言えるでしょう。
こうした発想の下、米国は国家の経済・技術力で他国を上回り続けることを目標に掲げています。例えば2022年に導入された先端半導体の対中輸出規制は、米国が技術的優位を維持することを目的としています。
米国と同盟国は世界の半導体製造装置市場の90%以上を支配しており、こうした「喉元」を押さえることで中国の軍事・技術台頭を抑え、自国の優位を盤石にしようとしているのです。
実際、関税支持派の中には「関税による経済的コストは国家安全保障のために払うべき必要な代償だ」と主張する声もあります。
つまり、高関税を含む一連の政策は単に貿易赤字を減らすことが目的ではなく、将来的に中国に主導権を渡さないための戦略的布石なのです。
要するに、高関税政策は世界経済における米国の相対的な地位(覇権)を守るための手段なのです。
他国との協調による共存ではなく、「競争に勝つ」こと、言い換えれば自国が相手より有利なポジションに留まることが目標となっています。
その意味で、アメリカが高関税に踏み切った背景には、経済的な利益よりも地政学的な優位性の維持という大きな狙いがあるのです。
このように、統合戦略にはゲーム理論的な考えに基づいており「相手に一方的な得をさせたくない」という動機から、“全員が損をする均衡”が生じやすいことがわかります。
その均衡を崩すには、両国とも「裏切りリスクを最小化する仕組み(多国間協定、国際機関、厳格なルールなど)」を整え、相互信頼を高める必要があります。
しかし、国際政治は必ずしも安定した協力関係を構築できるわけではなく、各国の内政事情や世論も複雑に絡むため、現実には簡単ではありません。