生命保険に入ってないことがいかに愚かなことか痛感して、「今すぐ生命保険が必要だ」と納得したジョンは、ダンと生命保険の契約をしました。

ダンはジョンの生命保険に対する優先順位を、全くの考慮外から、最優先順位に引き上げたわけです。

この事例は、私たちがつい見落としがちな重要なポイントを示しています。

ダンが売っているのは、生命保険の営業であれば誰でも売れるコモディティー商品です。

しかしダンは一切価格の話をしていません。その代わり、的確な質問を通してジョンの不安・リスク・将来像を質問に応える形でジョン自身に語らせることで、ジョンから「これは自分にとって優先順位が極めて高い」として認識させたのです。

冒頭の「値引きするしかない」というセールスと、ダンの違い、わかりますでしょうか?

現実にはお客様は、「商品の提供価値」が「商品に支払う価格」を上回れば、買います。下回れば買いません。つまりこういうことです。

買う→   商品提供価値 > 商品価格 買わない→ 商品提供価値 < 商品価格

冒頭の「値下げするしかない」というセールスは、単純に「商品提供価値=商品の機能」と考えて、商品ができることだけを説明しがちです。

たとえば保険セールスだと、「この商品は、お亡くなりになった場合の保険金が○○○○万円の保険です」と説明するわけです。「この商品機能に対して、この商品価格がついているから、説明すればいい」と考えているわけですね。

でも現実には、お客は商品提供価値(=商品の機能)が本当に商品価格を上回るのかが、よくわかりません。つまり「商品提供価値 < 商品価格」じゃないの、と思ってしまって買わないのです。

一方でダンは、お客であるジョン自身も気付かなかった「妻や子どもたちの将来への不安」を、ジョンが納得できるように、質問を通してジョン自身の言葉で明確に語らせています。

ジョンにとって「商品提供価値=妻や子どもたちの将来への不安への解決策」と比べると、商品価格(保険料金)は実に安いものに見えています。