つまり、「目に浮かぶ」タイプの記憶です。

このため、記憶が脳内に保存・再生されるときには、特に視覚空間処理(イメージを心の中で組み立てたり動かしたりする機能)が使われることがわかっています。

一方、テトリスでは、ブロックの形を回転・配置することを常に頭の中で考え続けますよね。

この作業は、まさに視覚的なイメージ処理を集中的に使わせます。

要するにテトリスをやっている間、脳の中では視覚イメージを操作する能力がフル稼働していて、新たなトラウマ記憶を再構築するためのリソースが足りなくなる、と考えられているのです。

特にトラウマ直後や思い出した直後にテトリスを行うと、その記憶の定着や再生が弱まるのではないかとチームは推測しました。

そこで実際に、テトリスを用いた実験を行ったのです。

1回20分間のテトリスで侵入記憶が減少!

チームは今回、COVID-19パンデミック(2020~2022年)中に業務上のトラウマにさらされたスウェーデンの医療従事者を対象に実験を開始。

パンデミック中に活動していたスウェーデンの医療従事者144人が参加しました。

参加者のうち、82%が女性、71%がフルタイム勤務、58%が看護師として働いており、平均年齢は41歳でした。

参加者はランダムに2つのグループに割り当てられました。

どちらのグループにも「認知タスクを行う」と伝えられましたが、一方のグループは「テトリス」をプレイするように指示され、もう一方のグループにはポッドキャストを聴き、その内容に関する簡単なクイズに答えるタスクが与えられました。

前者において、参加者は自身の侵入的なトラウマ記憶の1つを思い出し、その後スマートフォンで「テトリス」を20分間プレイするよう指示されました。

参加者は5週間にわたり日記をつけ、1日に経験した侵入記憶の回数を記録します。

加えて、心的外傷後ストレス症状(PTSD)やその他の心理的変数を測定する評価も行いました。