水戸戦では試合開始早々、ドリブルでアタッキングサードに侵入したMF青木亮太からのパスを受けた田中が強烈なミドルシュートを放ち右ポストを直撃。惜しくもゴールとはならなかったが、仮にこれが決まっていたら試合は真逆の展開となっていたかもしれない。続く第10節の藤枝戦では1点ビハインドで迎えた30分、わずかにペナルティエリア外の位置で直接フリーキックを得ると、田中が蹴ったボールが相手GKの手を掠めゴールネットを揺らし同点に追いついた。札幌がフリーキックに成功したのは、2024年7月に開催されたJ1第23節のヴィッセル神戸戦以来である。その後は後半開始早々にFWアマドゥ・バカヨコがゴールを決めて逆転に成功。56分には最終ラインに位置していたMF高嶺朋樹の縦パスを、プレッシングに来ていた藤枝の選手をワントラップで剥がし田中が縦へ推進したシーンには度肝を抜かされた。このように、個の力で状況を一変できる選手は今の札幌にはいないため、その価値は極めて高いと言える。

田中が新キッカーに名乗り
近年、札幌のプレースキッカー(※)は左足の精度の高さを誇るDF福森晃斗が務めていたが、その福森は現在横浜FCに期限付き移籍中だ。そのため札幌は、昨シーズンから絶対的なプレースキッカーが不在。コーナーキックやフリーキックの場面でも中々ゴールの雰囲気が漂ってこなかった。しかし、そんな心配を晴らしたのが田中である。
ピッチ上空に強風が吹きつけた第9節の水戸戦では、田中がコーナーキックで風をうまく利用。インスイングでのキックが起点となり、MF近藤友喜の一時同点ゴールを演出した。第10節でもフリーキックを見事に突き刺すなど、札幌は徐々にセットプレーからの得点の匂いが漂い始めている。
※試合が一時中断された後、地面に置かれたボールを蹴る選手のこと。
