
北海道コンサドーレ札幌に新たなファンタジスタが誕生しようとしている(※)。新潟県の帝京長岡高校から明治大学を経て2024シーズンに入団したMF田中克幸である。昨シーズンはルーキーイヤーながら明治安田J1リーグで17試合に出場し1ゴールをマーク。数字だけを見るとそれほど活躍したようには感じられないかもしれないが、田中のボールタッチシーンは球離れの良さや視野の広さ、足元の技術の高さなど高度な技術が隠れている。ほかにもチャンスクリエイトの起点となるシーンが多いなど札幌サポーターからの期待は大きい。
J2降格となった今シーズン。これまで7シーズンボランチとして活躍していたMF駒井善成が昨年12月に契約満了となったこともあり、当然ながら田中には主力としてプレーする事が期待された。開幕から2試合連続で出場を果たすも、その後は左膝外側側副靱帯損傷で戦列を離れており、今シーズンはここまでわずか5試合の出場となっていた。しかし、第8節の徳島ヴォルティス戦(1-0)から復帰するとチームに攻撃のリズムが見え始め、田中は間違いなく今シーズンのキーマンと言えるだろう。
チームはこれよりRB大宮アルディージャ、V・ファーレン長崎、モンテディオ山形、ジュビロ磐田といった強豪チームとの直接対戦を控えており、結果次第では上位進出もまだまだ狙える位置につけている。ここでは、日本人では希少になりつつある“ファンタジスタ”の素質を持つ田中のパフォーマンスについて紹介する。
※驚異的なテクニックや創造性で観客を魅了する、技巧に富んだ選手のこと。

個で打開、田中の力が光った2戦
今シーズンのJ2第9節水戸ホーリーホック戦(1-3)や第10節の藤枝MYFC戦(2-1)は、田中の良さが凝縮された試合だった。大学時代まではボランチを主戦場としていたが、プロ入り後はトップ下でも起用され藤枝戦ではトップでも起用されている。田中の持ち味はなんといっても視野の広さやハイレベルな足元の技術で、ボールを持つとチームの攻撃にスイッチを入れることが出来る。ほかにも長短のパスを使い分けたりタッチの細かいドリブルや強烈なミドルシュートと抜群の存在感を放っている。