これまで皮脂が診断ツールになるとは誰も考えたことがありませんでした。

しかしバラン教授は「皮脂が個々の病態や治療効果までも反映している」と指摘し、その重要性を強調しています。

現在では、ジョイさんの嗅覚能力にヒントを得て、人工鼻や訓練犬、さらにはAIを用いたシステムの開発も進んでいます。

たとえば、医療探知犬団体「Medical Detection Dogs」との共同研究では、ゴールデンレトリバーとラブラドールのミックス犬「ピーナッツ」が、ジョイさんに匹敵する嗅ぎ分け能力を示しました。

また、バラン教授は「セボミックス社(Sebomix Ltd)」を設立し、採取した皮脂を使った診断法の確立に取り組んでいます。

こうした新たな検査方法は、発症の何年も前にパーキンソン病を検出できる可能性を秘めているのです。

ジョイさんの驚異的な嗅覚と、それを科学の力で応用しようとする挑戦は、私たちに”匂い”という新たな健康指標の可能性を教えてくれています。

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参考文献

She Can Smell Parkinson’s—Now Scientists Are Turning It Into a Skin Swab
https://www.zmescience.com/science/news-science/she-can-smell-parkinsons-now-scientists-are-turning-it-into-a-skin-swab/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部