火元不明、目撃された「発火」、生存者の証言… 深まる謎
外部からの火元が特定できないケースも人体自然発火現象のミステリーを深めている。
1967年、ロンドンでホームレスの男性、ロバート・フランシス・ベイリーが廃墟ビルで焼死体となって発見された。第一発見者の警察官は、ベイリーの腹部に開いた約10cmの裂け目から青い炎が激しく噴き出していたと証言している。彼は非喫煙者で外部に火の気もなかった。しかし、彼は安価な変性アルコール(燃料用アルコール)を飲んでいたことが分かっており、体内のアルコールに何らかの原因で引火したのではないかという説がある。
さらに不可解なのは、発火の瞬間が目撃されたとされるジーニー・サフィン(61歳)の事例だ。1982年、イギリスでの出来事。父親によると、キッチンに一緒に座っていた際、視界の端で閃光を感じ、娘に尋ねようと振り向くと彼女が炎に包まれていたという。驚くべきことに、彼女は両手を膝に置いたまま、ただ静かに座っていた。父親は必死でシンクに連れて行き消火を試みたが、ジーニーは重度の火傷を負い、8日後に死亡した。これも父親のパイプの火花が風で引火したという説があるが、発火時の彼女の静かな様子は説明がつかない。
1986年、ニューヨーク州の元消防士ジョージ・モットも謎の焼死を遂げた。喫煙習慣はなく、外部の火元も見つからなかった。前夜にテレビ番組『トワイライトゾーン』を見て「あんな奇妙なことは自分には起こらない。起こればいいのに」と語っていたという皮肉なエピソードも残っている。
そして、人体自然発火現象を経験し、生き残ったとされるジャック・エンジェルという男性もいる。彼はトレーラーハウスで眠りにつき、4日後に目覚めると全身に火傷を負い、胸には大きな穴が開いていたと主張した。右腕は切断に至った。
しかし、彼は後にトレーラーの給湯器メーカーを相手取り300万ドルの訴訟を起こしており、その際の証言では「シャワー中に給湯器が故障し熱湯を浴びた」と述べている。裁判所の結論はこちらを採用したが、彼を診察した医師は「外からではなく、内側から燃えた火傷だ」と報告書に記していたという。果たして医師の見立て違いか、それとも…。
