プレミアリーグに限らず、欧州全体に目を移しても既に多くのクラブで導入されているセットプレー専門コーチは、戦術の細分化と専門性の向上により、試合の勝敗にも直結するセットプレーの精度を高める役割を担っている。
上記のプレミアリーグのクラブでも、セットプレー専門コーチが攻撃・守備のスキームを設計し、選手の配置や動きを緻密に指導。データを活用し、相手の弱点を突く戦略を立てることで、得点力や守備の安定性を向上させている。

日本におけるセットプレー専門コーチ
日本サッカー協会(JFA)も2022年、日本代表のセットプレー専門コーチとして、ジェフユナイテッド市原・千葉(2009- 2011、2015-2019)、大分トリニータ(2011-2014)、栃木SC(2020-2021)でコーチを歴任した菅原大介氏を採用した。
菅原氏は2010年にS級コーチライセンス(現JFA Proライセンス)を取得しているが、セットプレーの専門家として、日本代表年代別全カテゴリーのセットプレーに関する分析などを、その任務としている。ベンチ入りしてイレブンに対し直接指示することはないが、セットプレーを分析し、資料を作成して現場にフィードバックする役割がメインとなる。
一方、Jリーグにおけるセットプレー専門コーチの導入は、まだごく一部のクラブに限られている。今2025シーズン、J3のFC岐阜が「セットプレーアドバイザー」として同クラブOBの山内智裕氏を招いたが、あくまで外部スタッフとしての契約だ。
川崎フロンターレや横浜F・マリノスなど、戦術的に先進的なJ1クラブでも、セットプレーに特化したトレーニングやコーチの役割分担が見られるが、欧州のようなセットプレー専門コーチを専門職として配置するにまでは至っていない。
その理由としては、まずは予算面の都合でスタッフの人員が制約されている点、さらにはセットプレーへの戦術的優先度の違いが挙げられるだろう。Jリーグでは、セットプレーからの得点割合が欧州に比べやや低い(約20~25%=Jリーグ公式データに基づく)傾向が出ていることも理由だろう。
