古代シュメール文明。メソポタミアの地に栄え、世界最古の文明の一つとされる彼らが残した粘土板には驚くべき物語が刻まれている。それは、かつて「神々」が天から降り立ち、地上に最初の都市を築いた後、地球規模の大洪水が起こる直前に、再び天へと避難したという記録だ。

 世界各地に伝わる古代の洪水伝説の中でも、シュメールのそれは最も古い起源を持つと考えられている。紀元前2000年頃に遡るとされるこの伝説は、現代の私たちにとって神話や空想の産物と見なされがちだ。しかし、その詳細な記述は単なる作り話として片付けるにはあまりにも多くのことを物語っている

「神々」が築いた文明と最初の都市

 シュメールの粘土板によれば、かつてアヌ、エンリル、エンキ、ニンフルサグといった「神々」が、黒い頭の人々(シュメール人を指す)を創造し、動物たちが快適に生息し繁殖できる環境を整えたという。その後、「王権」が天から降り、エリドゥ、バド・ティビラ、ララク、シッパル、シュルッパクといった最初の古代都市が築かれた、と記されている。

 シュメール人は、現代の都市計画にも通じる格子状の街路網を持つ都市を建設し、下水道システムや舗装道路(玉石を使用)を発明した。高度な農業技術を持ち、そして何よりも、粘土板に楔形文字を刻むという、人類初の文字体系を発明した文明だった。彼らは間違いなく古代世界で最も進んだ文明の一つだったのである。

『TOCANA』より 引用
(画像=紀元前2300年頃のアッカドの円筒印章。イナンナ、ウトゥ、エンキの神々が描かれている。 画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)