『不思議の国のアリス』では、主人公なアリスが迷い込んだ奇妙な世界が描かれています。
この「不思議の国」では常識的な物理法則が崩壊しており、物体のサイズや重さが変化し、時間の流れも簡単に逆転してしまいます。
しかし常識的な物理学の崩壊は、なにも不思議の国の専売特許ではありません。
量子力学の世界では、1つの物体が2つの場所に同時に存在し、何もない場所から粒子が現れては消えていくことが知られています。
そして誰かが観察をしない限り、世界を飛び回る粒子の状態を確定させることもできません。
ですが、米国のアマースト大学(AC)の研究で、人工的に作られた「アリスのリング」は数ある量子世界の不思議さの中でも格別なものでした。
「アリスのリング」は物体が通過するとき、またはそれを通して他の物体をみたとき、その性質を変化させるという、極めて異常な性質があることが示唆されたのです。
研究者たちは「アリスのリング」を研究することで宇宙の最も深い構成要素である「物質と情報」の解明につながると述べています。
物体の性質を書き換えてしまう「アリスのリング」の正体とは、いったいどんなものなのでしょうか?
研究内容の詳細は2023年8月29日に『Nature Communications』にて公開されました。
目次
- 現実を歪める量子物体「アリスのリング」を生成することに成功!
現実を歪める量子物体「アリスのリング」を生成することに成功!

「アリスのリング」とは何なのか?
答えを理解するにはまず「1つの極しか持たない磁石」について知る必要があります。
誰もが知る通り磁石はN極とS極の2つの極が存在しています。
また普通の磁石をどんなに細かく割っても、N極とS極を単独で抽出することはできません。