そしてチームは個々のコールの音響特性(音声波形など)を元に、誰を呼んでいるか特定できるか分析を行いました。
その結果、コールの音響特性のみから、どのゾウに向けて呼びかけたか高い確率で判断できることが判明したのです。
研究者は「受信者の身元は、偶然よりも明らかに有意な確率で正しく識別できた」と論文内で述べています。
これは個々のゾウに特定のコール音(名前に相当するもの)が振り当てられている可能性を示唆するものです。
ただここで一つ、チームは明らかにしておかなければならないことがありました。
それはゾウが一部の知能が高い動物が採用している「声マネ」を行っているかどうかです。
相手の「声マネ」で呼びかけるなら、名前は必要ない
「声マネ」はイルカやオウムなどの知能が高い動物が行っている呼びかけ方法です。
彼らは呼び寄せたい相手の声マネをすることで、誰に向けて話しているかを明らかにしコミュニケーションを取っています。
例えば、AさんがBさんを呼ぶ際に、Bさんの口調を真似して話した場合は、彼らはBさんに向けて話しかけていると判断するのです。
こうした動物たちは口調のマネが名前代わりになっているため、「タロウ」とか「ハナコ」といった固有名の発音は持ちません。
ところが興味深いことに、ゾウの音声データを分析してみると、受信者の声マネをしている有意な証拠は見つかりませんでした。
これはゾウが声マネではなく、個々のゾウに振り当てられた特定の発音(=名前)を採用している可能性が高いことを示しています。

チームは別の実験として、17頭のゾウを対象に「彼らに無関係なコール音」と「彼らの名前に相当すると思われるコール音」の両方を録音再生して、どんな反応を示すかを調べました。
すると大部分のゾウは、彼らの名前に相当するとされるコール音にすばやく反応してスピーカーに近づき、より早く応答を返したのです。