一人一人が「名前」を持つことは、あらゆる生物の中で人間固有のものと考えられています。

しかし米コロラド州立大学(CSU)は2023年の研究で、野生のアフリカゾウがお互いを名前で呼び合っている可能性が高いという驚くべき報告をしました。

これが真実であれば、人間以外で個人の名前を持つの動物の初発見となるかもしれません。

さて、ゾウたちはどのように名前を呼び合っているのでしょうか?

研究の詳細は、2023年8月27日付で査読前論文がプレプリントリポジトリ『bioRxiv』に公開されています。

目次

  • ゾウは「名前」で相手を呼んでいた⁈
  • 相手の「声マネ」で呼びかけるなら、名前は必要ない

ゾウは「名前」で相手を呼んでいた⁈

ゾウはとても知能の高い動物であり、新しい音の発声学習ができる数少ない哺乳類の一種です。

彼らが発する最も一般的な鳴き声は超低周波(13〜35Hz)のランブル音で、近距離にいる仲間に話しかけるときと、2キロ以上離れた遠距離にいる仲間に呼びかけるときの両方で使われています。

こちらが実際のランブル音です。(低く唸るような音で、一部は人の耳にも聞こえない周波数に達するという)

今回の調査は、こうしたゾウの音声学習能力の理解を深める一環としてスタートしました。

研究チームは、アフリカ東部ケニアにある2つの地域「サンブル国立保護区(Samburu National Reserve)」と「アンボセリ国立公園(Amboseli National Park)」に暮らす野生のアフリカゾウからランブル音を採集し、仲間に対してどんな呼びかけをしているか分析しています。

最終的なデータセットには625件のコール(仲間への呼びかけ)が含まれており、うち597件は同じ社会的グループに属するメンバー間で起こっていました。

分析では、2頭の間でのみ生じたコール、つまり発信者と受信者を特定できるコールのみを対象とし、合計で発信者114頭、受信者119頭が観察されています。

アフリカゾウ
アフリカゾウ / Credit: canva