クリスティンは特に警察の対応に失望し、オロフ・パルメ首相に直接電話をかけました。

彼女は人質たちの命が危険にさらされていること、そして犯人たちの要求に応じることの重要性を懸命に訴えました。首相は理解を示しつつも、犯人たちを外に出すことのリスクを懸念していました。

その対応に疑問を感じたクリスティンは、通話の最後に 「助けてくれてありがとう」と皮肉を込めた言葉で首相に感謝の意を示したのです。

こうしたクリスティンの行動は、かなり犯人側に協力的で同情的と見られる原因になったでしょう。

催涙ガスの使用により事件は解決。しかし…

警察は銀行の金庫室に催涙ガスを投げ込んだ
警察は銀行の金庫室に催涙ガスを投げ込んだ / Credit:Classic Picture Library/Alamy Stock Photo

事件発生から6日が経過した頃、人質たちは警察が催涙ガスを投げ入れるための準備として、天井に穴を開けている音を耳にしました。

当然犯人たちもこのことに気づき、計画を実行すれば人質を殺害すると警察を脅し、人質たちも計画を変えるように警察に訴えました。

しかし結果的に警察は催涙ガスの使用を決行。被害者や犯人たちは床に倒れ嘔吐し、ヤン・エリックは逮捕され、他の人質たちは無事に救出されました。

この救出作戦はたまたま上手く行っただけであり、被害者にも大きな被害が出る可能性があったとクリスティンは考えたようです。

そのため彼女は後に警察のこの強引な救出方法に疑問を持ち、公然と批判する姿勢を行ったのです。

しかし、このとき彼女のとった警察への批判姿勢は、強盗犯に同情し擁護するために発せられたと理解され、後に「ストックホルム症候群」という名で世界中に知られることなるのです。

ストックホルム症候群は本当に病気なのか

スウェーデンの精神科医ニルス・ベジェロットは、クリスティンに会ったこともないにもかかわらずストックホルム症候群と診断した
スウェーデンの精神科医ニルス・ベジェロットは、クリスティンに会ったこともないにもかかわらずストックホルム症候群と診断した / Credit:Wikimedia Commons