カナダのセラピスト、アラン・ウェイド博士は、「彼女は心理学界で最も有名な女性の一人であり、最も深く誤解されている女性の一人です」と、 彼女の体験が誤解されていると指摘しています。

一体どのような部分が誤解されているのでしょうか。まずは事件を振り返ってみましょう。

ストックホルム症候群の起源となった事件

衝撃の6日間

その日、スウェーデン信用銀行に勤めるクリスティンが、いつも通り働いていると、銃を持ったヤン=エリック・オルソンが現れました。彼はラジオでロックミュージックを流しながら、クリスティンを含む4人の銀行員を人質に取ったのです。

彼の要求は高額な身代金だけでなく、刑務所に収監されていた仲間、クラーク・オロフソンの解放も含まれていました。

意外なことにスウェーデン政府はこの要求に応じ、クラークを銀行に送り込みました。

このクラークはその後、人質たちに対して友好的な態度で接してくれたようで、クラークが彼女たちの安全を確保するため、ヤン=エリックを説得するなどの行動をとったと言います。

そのためクラークの到着は銀行内の緊張を緩和させることとなり、特にクリスティンにとって、彼は安心感をもたらたようです。

この銀行襲撃事件は、最終的に6日間にも渡って続いたため、その緊張感の中で、緊張を緩和させる存在となった犯人の存在は、被害者たちが犯人グループに絆を感じる原因になった可能性はあるでしょう。

しかし、被害者たちの感情は一般的に理解されているものとは異なっていた可能性があるようです。

首相との対話

オロフ・パルメ(1984年)
オロフ・パルメ(1984年) / Credit:ja.wikipedia

警察は最初の数日間に大失態を犯しました。

警察はヤン=エリックの正確な身元を特定できず、カイ・ハンソンという脱獄犯だと思い込み、カイ・ハンソンの弟を現場に送り込んでしまったのです。

そのためヤン=エリックはこの少年に向けて発砲、少年は危険を感じてすぐにその場から逃げ出しましたが、これにより人質たちは警察の能力を疑問視し始めました。